2021年4月22日、菅義偉総理大臣(当時)は2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すと表明しました。地球温暖化の対策として、再生可能エネルギーなど脱炭素電源の最大限の活用や地域の脱炭素化への支援などに取り組むと説明しています。
こうした取り組みの中で特に重要な分野があります。それは畜産業です。食肉の需要が国際的に高まることにより、増える牛から放出されるメタンなどが温暖化の主な要因となっています。また畜産の「工業化」は、世界的な土地の劣化、生物多様性の喪失、森林破壊、水質汚染、水不足の要因ともなります。高い削減目標は、食肉の生産方法を根本から考えなければ達成できません。
地球温暖化を防ぐ「代替肉」?
畜産による温暖化を少しでも減らすために、「代替肉」という選択肢があります。植物性タンパク質由来の植物肉と、牛や豚などの細胞を分離・増殖して作る培養肉は、どちらも環境負担が従来の動物タンパク質よりもはるかに小さく、動物から人にうつる感染症の拡大リスクも排除できるメリットがあります。
こうした代替肉は、私たちの暮らしの中で見かける機会はまだ少ないように思いますが、実は徐々に身近になりつつあります。2021年8月3日日本経済新聞夕刊「植物肉じわり食卓に」によれば、大手スーパーなどが今春から精肉コーナーで扱い始めたことで関心が広がり、植物肉を使った料理教室も人気だ、大手食品メーカーは加工食品の品ぞろえを増やしている、と報じています。
私は、この夏、実際にスーパーに行ってみて、植物肉が置いてあるのを目にしました。身近な存在になりつつある植物肉をもっと広めるために、どうすれば良いか、私は「ヴィーガン」に注目しました。
ヴィーガンとは?
ヴィーガンとは、食事を含めた日常生活全般において、動物性食品や製品を使わずに生きることを選ぶ人のことを言います。ヴィーガンが世界で広がり、植物肉のような食品が多く使われることは、地球環境への負荷を減らし、人々の健康意識を高めることにもつながります。
ヴィーガン的食生活とSDGsの関係
ヴィーガンの取り組みは、SDGsが掲げる目標とも深く関わっていると考えます。SDGsの掲げる各目標との関係を具体的に考えて見ました。
2015年時点で、世界で7億人を超える人々が貧困状態(国際的な貧困ライン:1日1.9ドル以下で暮らす人々)にあり、持続可能な生活を確保する収入や資産がなく、飢餓や栄養不良などに苦しんでいます。そんな現状の中、世界中の肉食者のために土地を奪われ、住む場所を失う人がいます。世界第2位の牛肉生産量を誇るブラジルでは、1988年から2014年までに、アマゾンで森林伐採された地域の63%が牛の放牧地になったデータがあるほど。肉を選択的に食べないヴィーガンが増えることで、土地を失う人や貧困ラインを下回る人が減ることでしょう。
世界では多くの穀物が栽培されていますが、およそ35%が家畜の飼育用に生産されています。農林水産省では、肉1キログラムの生産に必要な穀物の量を、牛肉は11キログラム、豚肉は6キログラム必要と試算しています。飢餓をなくすためには、当たり前に食べている肉食を見直すことが有効といえます。
食べるための家畜を飼うためには多くの水が必要であり、畜産業は水質汚染の原因の一つになっています。例えば牛を飼う場合、掃除や排泄物を洗い流したり、病気の予防に使われる薬などが海や川に流されたりしています。 牛肉1kgを生産するためには、1kgのとうもろこしを生産するよりも約2万倍もの水が必要です。安全な水とトイレを確保するためには、食肉生産を見直す必要がありそうです。
例えば閉店間際のスーパーへ行くと、肉や魚といった生鮮食品には値引きシールが貼られて出来るだけ売る努力がされていますが、それでも売れない場合は破棄されてしまいます。飢餓で死んでいく人がいるのに、日本では年間約612万トン、世界ではまだ食べられる食料が13億トンも廃棄されています。これは家庭における食品ロスも多く含まれています。
ヴィーガンを実践すると、肉や魚といった生鮮食品の食品ロスを減らすことができます。ヴィーガンからは食品ロスを減らす生活を、学ぶことができます。
畜産業の拡大はアマゾンの森林破壊を進めています。ブラジル国立宇宙研究所によると、ブラジル国立の熱帯雨林の破壊が2008年以降で最悪の状態に加速していると報道されています。また人間が増えたことにより海の海洋資源がどんどん減っており、30年後には海洋生物よりプラスチックゴミが、魚の重量を上回るとも言われています。海や陸の豊かさを守るためにも、肉や魚を食べないヴィーガンのライフスタイルは注目されています。
まとめ
私は、今まで「代替肉」や「ヴィーガン」という言葉を聞いたことはあったけれど、何が環境にいいの?と思ったり、味は美味しいの?などと「?」と思うことがありました。しかし、自分で実際に調べて、お肉を買い、料理をしたことで、より身近に感じることができました。また、ヴィーガンは、飢餓や貧困、自然破壊における目標を達成するために有効な方法の一つです。明日からヴィーガンを完璧に実践するのは難しくても、私たちの生活を見直すヒントはたくさんありそうです。例えば、週に一度肉や魚を食べない日を作り、地球環境の改善に貢献し、貧困に苦しんでいる人に寄り添ってあげるというのはいかがでしょうか?まずは、できることから始めてみませんか?
参考文献
「代替肉の開発、公的資金で進めよ」米グッドフード・インスティテュートアジア太平洋広報・プログラム部長 ライアン・ヒューリング(日本経済新聞 2021年9月3日)
「植物肉じわり食卓に」(日本経済新聞 2021年8月3日)
ヴィーガンが貧困や飢餓を止める?ヴィーガンとSDGsの深い関係https://vegeness.com/blog/43720/
大豆のお肉100%置き換えハンバーグhttps://www.marukome.co.jp/recipe/detail/cooking_220/
マクロビ◆簡単!大豆ミートの唐揚げhttps://cookpad.com/recipe/2208438
アサヒグループホールディングス 青山ハッピー研究所 第604回 お肉は大好きですか?https://www.asahigroup-holdings.com/company/research/hapiken/maian/201608/00604/
農林水産省「知ってる?日本の食糧事情2020」(令和2年12月)
環境省バーチャルウォーター https://www.env.go.jp/water/virtual_water/